パッケージエアコンとは、屋内用ユニットと屋外用ユニットが一体となって動作する、効率的で扱いやすい冷暖房システムです。
パッケージエアコンには、設置場所や用途に応じてさまざまなタイプが用意されています。オフィスや店舗といった使用環境や設置スペースの条件によって、最適なエアコンの形状は異なるので、状況に応じた選定が重要です。
本記事では、パッケージエアコンについて紹介していきます。
他にも「パッケージエアコンの種類」や「パッケージエアコンの選び方」について解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、パッケージエアコンについて理解を深めてみてください。
パッケージエアコンとは?

パッケージエアコンとは、室内機と室外機が一体のシステムとして構成されているエアコンです。
設置や運用がしやすい点が特長で、複数の空調機器が一つにまとめられています。
1台の室外機で複数の室内機を同時に動かすことができるので、商業施設やオフィスビルなど、広い空間でも効率的な空調制御が可能です。
パッケージエアコンと家庭用エアコンの違い
家庭用エアコンとパッケージエアコンの違いは、空調の対応能力が挙げられます。
家庭用の機種は、一般住宅のような限られたスペースに合わせて設計されており、最大でも3馬力程度の性能にとどまります。
これに対して、パッケージエアコンは商業施設や広い空間を対象にしており、最大で10馬力のモデルまで用意されているため、より高出力で大規模な空間でも快適な空調が可能です。
さらに、法定耐用年数が13年から15年と定められており、実際の運用でも10年から15年程度使用できることが一般的です。
このように、設置目的や使用規模の違いに応じて、選ぶエアコンの種類も大きく異なります。
パッケージエアコンとビル用マルチエアコンの違い
ビル用マルチエアコンは業務用エアコンの一種ですが、一般的にパッケージエアコンには分類されません。
通常のパッケージエアコンは、屋外に設置される室外機から屋内の各室内機に対して電力が一括で供給される仕組みですが、ビル用マルチエアコンの場合は、室外機と室内機がそれぞれ別々の電源で動作します。
この構造により、室外機の処理能力の範囲内であれば、室内機の種類や組み合わせを比較的自由に選べるというメリットがあります。
パッケージエアコンの種類

パッケージエアコンの種類については、以下の3つが挙げられます。
- 種類①:オフィス用パッケージエアコン
- 種類②:設備用パッケージエアコン
- 種類③:ルーフトップ型パッケージエアコン
それぞれの種類について解説していきます。
種類①:オフィス用パッケージエアコン
オフィス用パッケージエアコンとは、商業施設や事務所などに最適化された空調設備です。
屋内機と屋外機がセットで設計されており、冷媒配管が比較的短い距離で済むため、設置がスムーズに行えるのが特長です。
また、1台の屋外機で複数の屋内機を一括制御することが可能で、広い空間や複数の部屋が存在するような場所にも効率的に対応できます。
さらに、設置場所や空間のレイアウトに応じて、天井に埋め込むタイプや壁面取り付け型、ダクトと接続する形式などさまざまな仕様から選択できるので、内装のデザインや使い勝手に合わせた柔軟な対応が可能です。
種類②:設備用パッケージエアコン
設備用パッケージエアコンは、工場や倉庫、各種施設など広さと特殊な環境条件が求められる現場で使用されるモデルです。
広範囲の空間を効率よく冷暖房できるように設計されており、5馬力から最大54馬力まで、さまざまな出力のラインナップがあります。
そのため、空間の大きさや用途に応じた柔軟な選定が可能です。
また、このエアコンは空冷式と水冷式の2種類に分かれており、それぞれについては下記にて解説していきます。
空冷式エアコン
空冷式のエアコンは、空気の流れを使って熱交換する仕組みです。
室外機に備わったファンによって、屋内外の空気を循環させ、その過程で冷媒が冷やされ、冷たくなった空気が室内に送り込まれます。
このタイプのエアコンは、水冷式とは異なり、冷却塔や大規模な配管設備が不要なため、設置場所に制約が少なく、狭いスペースにも対応可能です。
そのため、初期の設置工事にかかる費用を抑えられるというメリットもあります。
さらに、運用面でも扱いやすく、水質管理や冷却塔の定期的なメンテナンスが不要なため、維持管理の手間が比較的少ないのも魅力のひとつです。
水冷式エアコン
水冷式エアコンは、水の持つ高い熱伝導性を活かし、空冷方式に比べて優れた熱交換効率を実現しています。
消費電力も比較的少なく、省エネルギー性に優れているのが特徴です。
また、水冷式ではクーリングタワーを建物の屋上など屋外に設置するため、室内機の運転音が控えめで、静音性に優れており、利用できる場所の幅が広がっています。
しかし、冷却塔と室内機を接続するために大規模な配管が必要となり、その分広い設置スペースが求められます。
そのため、小規模な住宅よりも、工場や商業施設、ビルなどの大型建築物での使用に適していると言えます。
特に、工場のように複数の熱源が発生するような環境では、冷却水を利用した水冷方式の効率的な熱処理能力が重宝されています。
種類③:ルーフトップ型パッケージエアコン
ルーフトップ型パッケージエアコンは、主に建物の屋上に取り付けられるタイプの空調機器です。
通常分離している室外機と室内機が一体化されているのが大きな特徴です。
一体型構造により、室内には冷暖房された空気をダクトを通して送り込む仕組みとなっており、空調機本体を室内に置く必要がないため、内装のデザインやレイアウトに制限が少なく、自由度の高い設計が可能になります。
また、空調機を目立たせずに設置できるのもメリットの一つです。
さらに、屋上に設置されるこのタイプは空冷方式を採用しており、外気を活用した熱交換が行えるため、冷暖房効率が良いのも魅力です。
特に、屋外の自然な換気を利用できることで、エネルギー消費を抑えた空調運転が実現できます。
パッケージエアコン室内機の形状

パッケージエアコン室内機の形状については、以下の6つが挙げられます。
- 形状①:天カセ型
- 形状②:天吊形
- 形状③:天井埋込ダクト形
- 形状④:ビルトインカセット形
- 形状⑤:壁掛形
- 形状⑥:床置形
それぞれの形状について解説していきます。
形状①:天カセ形
天井カセットタイプのエアコンは、数多くの企業やオフィスで一般的に利用されている代表的な空調設備です。
天井部分に本体を組み込む形で設置されることから、その名前がついています。
しかし、設置には専門の工事が必要で、天井への開口や配管作業が伴います。
また、本体が天井内部に収まるため、室内空間をすっきりとした印象に保てるのが大きな特徴です。
具体的に、天カセ形の種類については、以下の4つが挙げられます。
- 4方向吹出形
- 4方向吹出コンパクト形
- 2方向吹出形
- 1方向吹出形
それぞれの種類について解説していきます。
4方向吹出形
業務用エアコンの中でも、特に汎用性に優れ、多くの場所で採用されている代表的なタイプです。
室内全体に均一な温度を届けやすく、風量や風向きを細かく調整できる機能が充実している点が特長です。
見た目のバリエーションも豊富で、設置場所の雰囲気に合わせてカバーの色などを選ぶことが可能です。
取り付けする際には、天井の高さや内部のスペース、配管経路の条件などを事前に確認する必要があります。
4方向吹出コンパクト形
4方向吹出コンパクト形は、設置に必要なスペースが少なくて済む反面、選べる出力(馬力)のバリエーションは通常モデルに比べて限定されてしまいます。
導入前には、天井の高さや天井裏の空間、配管の取り回しなど、現地での詳しい調査が必要です。
また、設置時には室内の温度の偏りや風の当たり具合といった点にも配慮しながら選定することが重要です。
2方向吹出形
2方向吹出形は、長方形の形状で空気を2方向に送る構造になっています。
空調の吹出口が4方向にある機種では、設置する際に気流のバランスが取りにくかったり、複数台を並べたときの風の流れや見た目の調和が難しい場合があります。
そのため、デザイン性や風の分布を重視する現場では、2方向タイプが選ばれるケースも少なくありません。
長方形の空間にフィットする設置が可能な一方で、全方向に風を送るタイプと比べると、どうしても風が特定の方向に偏りやすいデメリットが挙げられます。
また、設置場所の天井の高さや天井裏のスペース、配管ルートなど現場での詳細な確認が必要になるので、あらかじめ注意が必要です。
1方向吹出形
1方向吹出形は、シンプルな長方形デザインで、吹出口が一方向のみとなっている点が特徴です。
外観は2方向吹出型と似ていますが、空気の流れる向きが一方に限られているため、部屋の隅や天井の段差部分など、設置スペースに制約がある場所での使用に適しています。
コーナーや下り天井への設置が求められる場面では、空間にうまくなじむデザインで、見た目もすっきりと仕上がります。
しかし、4方向や2方向の吹出口を持つタイプと比較すると、気流が特定の方向に偏りやすくなるため、空気の流れに関する計画が重要です。
形状②:天吊形
天吊形は、天井から吊るして取り付けるタイプのエアコンのことです。
天井内部のスペースを確保する必要がないため、設置場所の選択肢が広く、レイアウトに柔軟性があるのが特徴です。
主に天井下に本体を設けて前方向に送風する仕組みで、学校の教室など多くの人が集まる空間でよく採用されており、特に吹き抜けがある施設や奥行きのある店舗でも利用されています。
しかし、室内機が見える位置に設置されるため、風が部屋全体に行き渡るようにバランスよく配置することが重要です。
さらに、むき出しの配管部分については、空間の見た目を損なわないように、カバーなどを使って意匠的な配慮をする必要があります。
形状③:天井埋込ダクト形
天井埋込ダクト形とは、天井に本体を埋め込み、ダクトを通じて送風と吸気を行うエアコンです。
室内の見た目をすっきりさせられるのが特徴で、吹き出し口や吸い込み口を任意の位置に設置できるため、空間のデザインや間取りに合わせた柔軟な設置が可能です。
しかし、天井内部に十分な設置スペースが必要で、施工にかかる費用も比較的高くなる点には注意が必要です。
形状④:ビルトインカセット形
ビルトイン型エアコンは、天井カセット型とダクト型の長所を組み合わせたタイプです。
外観は天井カセット型に近いデザインですが、吹き出し口と吸い込み口が分かれている点はダクト型に似ています。
しかし、吸い込み口は室内機に組み込まれているため、ダクト型ほど大がかりな施工は不要です。
天井にあまり余裕がなくても、インテリアとの調和を重視したいケースにおいて、非常に使いやすい選択肢と言えます。
形状⑤:壁掛形
壁掛けタイプの業務用エアコンは、言葉の通りで、壁付けのエアコンのことです。
多くの業務用壁掛けエアコンは三相200ボルトの電源を必要とし、ブレーカーからの直結で電力を供給する仕組みとなっています。
一方で、3馬力クラスの製品の中には、家庭用と同様に単相200ボルトで動作するモデルも存在します。
そのため、使用目的や設置環境によっては、高機能な家庭用エアコンを選ぶという選択肢も十分に考えられます。
形状⑥:床置形
床に設置するタイプのエアコンは、人が立っているときの目の高さと同じくらいの位置から風が出るため、冷暖房の効果をより直接的に感じやすいという特長があります。
設置にかかる工事はそれほど複雑ではなく、コストも比較的抑えられるのがメリットです。
また、日常的なメンテナンスもしやすいため、手入れの面でも使い勝手が良いと言えます。
しかし、風が直接体に当たることで不快に感じたり、部屋の中で温度のムラができやすかったりするので、あらかじめ注意が必要です。
パッケージエアコンの選び方

パッケージエアコンの選び方については、主に以下の2つが挙げられます。
- 設置場所
- 設置個数
それぞれの選び方について解説していきます。
設置場所
業務用として使われるパッケージエアコンは、家庭用のように単純に部屋の面積だけを基準にして選ばないように注意が必要です。
例えば、静かなオフィスで人の出入りが少ない環境と、油煙や熱気が多い飲食店では、同じ広さであっても必要となる空調の能力が大きく異なります。
このように、用途や使用状況によって求められる性能が変わるため、適切な能力のエアコンを選ぶことが重要です。
設置個数
室内に複数のエアコンを設置する際には、その空間の形や特徴を十分に考慮する必要があります。
例えば、横に長いスペースや廊下のような奥行きのある場所では、風を遠くまで届けられる天井吊り下げ式や床置きタイプが適しています。
一方で、部屋が正方形に近い形状であれば、四方向に風を送ることができる天井埋込カセット形を使うと、より均等な空調が可能になります。
広めの空間には、室内機を均等な間隔で2〜4台程度設置し、必要に応じて台数を調整することをおすすめします。
適切なパッケージエアコンを選ぼう!

今回は、パッケージエアコンについて紹介しました。
業務用として多く利用されているパッケージエアコンは、利便性が高い一方で、適切な機種選定を誤ると本来の性能を活かせない恐れがあります。
そのため、導入を検討する際には、設置環境に合ったタイプや形状、必要な馬力などを慎重に見極めることが重要です。
今回の記事を参考にして、適切なパッケージエアコンを選ぶようにしましょう。