天井カセットエアコンとは、室内機を天井に組み込むタイプの業務用エアコンのことです。
天井と一体化するデザインのため、空間がすっきりとした印象になり、インテリアの邪魔をしにくいのが特徴です。
本記事では、天井カセットエアコンについて紹介します。
他にも「天井カセットエアコンの種類」や「天井カセットエアコンのメリット・デメリット」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、天井カセットエアコンについて理解を深めてみてください。
天井カセットエアコンとは?

天井カセットエアコンは、オフィスや商業施設などの広い室内空間の天井に埋め込んで設置するタイプのエアコンです。
室内のデザインを損なわず、省スペースで効率的に空調を行えるのが特徴です。
風を複数の方向へ均等に送ることが可能で、静音性にも優れているため、快適な室内環境を維持しやすくなっています。
また、省エネルギー性能が高い機種もあり、効率的な運転ができるのも特徴の一つです。
また、冷暖房機能に加え、加湿や除湿、空気清浄などの機能を備えたモデルもあり、多様なニーズに対応できるエアコンとして活用されています。
天井カセットエアコンの仕組み

天井カセットエアコンの仕組みとして、室外機と室内機の連携により熱交換と空気の循環を行い、室内の温度を調節します。
このエアコンには「冷媒」と呼ばれる物質が使用され、蒸発と凝縮を繰り返しながら熱を移動させることで、冷房や暖房の効果を生み出します。
このサイクルは、以下4つの主要なプロセスによって成り立っています。
- 圧縮
- 膨張
- 蒸発
- 凝縮
エアコンの室外機にはコンプレッサーが搭載されており、ここで冷媒が圧縮されることで高温・高圧のガスへと変化します。
このガスが室内機へ送られると、膨張弁によって急激に膨張・蒸発し、低温・低圧の状態に戻ることで冷却効果を生み出します。
また、室内機にはエアハンドラーやファン、蒸発器が内蔵されており、冷媒が蒸発する際に周囲の熱を吸収することで室内の温度を下げる仕組みです。
一方、暖房時には冷媒が室外機で凝縮する際に発生する熱を利用し、暖かい空気を室内へ送り込むことができます。
天井カセットエアコンの種類

天井カセットエアコンの種類については、以下の4つが挙げられます。
- 天井カセット形1方向吹出タイプ
- 天井カセット形2方向吹出タイプ
- 天井カセット形4方向吹出タイプ
- 天井カセット形4方向吹出コンパクトタイプ
それぞれの種類について解説していきます。
天井カセット形1方向吹出タイプ
天井埋込カセット1方向吹出形は、シンプルなデザインが特徴であり、特に部屋のコーナーや下がり天井への設置に適した形状です。
1方向のみに風を吹き出す仕様なので、設置できる場所がある程度限られるものの、コーナー部分に配置することで効果的に空調を行うことができます。
また、天井にすっきりと収まるデザインのため、室内のインテリアと調和しやすく、目立ちにくい点もメリットの一つです。
しかし、4方向吹出形や2方向吹出形に比べると、風の流れが一方向に偏りやすいので、設置の際には吹出し口の向きを慎重に検討することが重要です。
天井カセット形2方向吹出タイプ
天井埋込カセット2方向吹出形は、天井に設置する業務用エアコンの一種で、形状が長方形になっているのが特徴です。
正方形の天井埋込カセット4方向吹出形では設置が難しい場所にも対応しやすく、限られたスペースや特定のレイアウトに適しています。
2方向に風を吹き出す構造になっているので、特に奥行きのある細長い室内空間に適しています。
また、4方向吹出形では空調のバランスが取りにくい環境でも、より効率的に空気を循環させる目的で選ばれることがあります。
さらに、本体の形状が長方形なので、デザイン性を重視して採用されるケースもあります。
しかし、風の吹出し方向が2方向に限定されるため、4方向吹出形に比べると空調の均一性が低下しやすい点には注意が必要です。
そのため、最適な設置場所を慎重に選定することが、快適な空調環境を実現するための重要なポイントとなります。
天井カセット形4方向吹出タイプ
天井カセット形4方向吹出タイプは、業務用エアコンの中でも特に一般的な形状として広く採用されています。
他の形状に比べて汎用性が高く、設置スペースさえ確保できれば、多様な環境に適応できるのが特徴です。
本体は正方形のデザインで、天井に埋め込む形で設置されます。
吹き出し口は4方向に配置されているため、室内の空気を均一に循環させることが可能です。
また、機種によっては風量や風向きを細かく調整できるものもあり、空間に馴染むデザイン性の高いモデルがあるので、多くの業務用施設で採用されている代表的なエアコンの一つと言えます。
天井カセット形4方向吹出コンパクトタイプ
天井カセット4方向吹出コンパクトタイプは、天井カセット4方向吹出タイプと同じ構造を持ちながら、本体サイズがコンパクトに設計されている点が特徴です。
省スペースでの設置が可能で、設置場所の制約がある場合にも適応しやすい仕様となっています。
さらに、このタイプも天井埋込カセット4方向吹出形と同様に高い汎用性を備えています。
しかし、コンパクトな設計ゆえに、選択できる馬力の種類が通常の天井カセット4方向吹出タイプよりも限られているのがデメリットと言えます。
天井カセットエアコンのメリット

天井カセットエアコンのメリットについては、以下の3つが挙げられます。
- 効率的な温度調整ができる
- 見た目がすっきりする
- 天井を有効活用できる
それぞれのメリットについて解説していきます。
効率的な温度調整ができる
天井カセットエアコンは広めの空間に適しており、特に縦に長い間取りの部屋を効率よく空調するのに優れています。
例えば、リビングダイニングと和室が続いていて、一体的に使うような間取りは、部屋全体に均一に空気を循環させることが求められます。
こうしたケースでは、吹き出し口が複数ある天井カセットエアコンを選ぶのがおすすめです。
1台で左右に風を送り、広範囲に気流を行き渡らせることができるため、部屋のどこにいても温度差が生じにくくなります。
さらに、室温を均一に保てることで無駄なエネルギー消費を抑えられ、省エネ効果も期待できます。
見た目がすっきりする
天井カセットエアコンは、。壁掛けエアコンのように室内の壁面に張り出すことがないので、空間がすっきりとした印象になります。
また、天井と一体化することで室内を広く見せる効果もあり、シンプルで洗練されたインテリアを求める方に最適です。
天井を有効活用できる
天井カセットエアコンなら、天井スペースを有効活用できるメリットがあります。
さらに、天井から均一に風を送り出せるため、設置場所の制約を受けにくく、部屋全体をバランスよく冷暖房することが可能です。
天井カセットエアコンのデメリット

天井カセットエアコンのデメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 費用が高い
- 照明設定を考慮する必要がある
- 天井裏でトラブルが起きてしまう
- メンテナンス費用が高くなる
それぞれのデメリットについて解説していきます。
費用が高い
天井カセットエアコンは、天井内部に本体を設置する構造のため、壁に取り付ける壁掛け型エアコンと比べて、設置工事にかかる手間が増えてしまうので、その分施工費用も高くなる傾向があります。
特に新規で取り付ける場合、天井の化粧板をエアコン本体のサイズに合わせて切り抜いたり、室外機と接続するための配管や配線を行う必要があります。
そのため、単なる交換工事と比べると、作業工程が多くなり、設置にかかる時間やコストも増加してしまいます。
照明設定を考慮する必要がある
天井カセットエアコンを採用する場合は、照明と一体的に計画を進める必要があります。
エアコン本体に加えて、配管やコンセントの配置など天井裏の構造を細かく調整しながら照明の配置を決めることになります。
そのため、場合によっては特定位置に照明を設置したいのに難しくなってしまうリスクも考えられます。
天井裏でトラブルが起きてしまう
天井カセットエアコンのデメリットとして、故障などのトラブルが天井裏のような目に見えない場所で発生する可能性があることです。
実際に、エアコンは精密な電化製品であるため、5〜10年ほど使用を続ければ、何らかの不具合が生じる可能性は避けられません。
万が一トラブルが発生した場合、原因を特定するために天井裏を調査する必要があり、その結果として修理にかかる時間や費用がかさむことも考えられます。
メンテナンス費用が高くなる
天井カセットエアコンは壁掛け型に比べて、清掃やメンテナンスの費用がやや高くなる傾向があります。
エアコンの種類に関係なく、定期的なメンテナンスは非常に重要になります。
フィルターをこまめに掃除していても、内部に蓄積する汚れや嫌な臭いは、一般の方では完全に取り除くのが難しい場合があります。
そうした際には、専門のクリーニング業者に依頼するのが一般的ですが、その分メンテナンス費用が高くなってしまいます。
天井カセットエアコンのトラブル事例

天井カセットエアコンのトラブル事例については、以下の4つが挙げられます。
- ガス漏れ
- 異常停止
- 異臭
- 水漏れ
それぞれのトラブル事例について解説していきます。
ガス漏れ
天井カセットエアコンで発生しやすいトラブルの一つに、冷媒ガスの漏れや不足があります。
冷媒が十分に確保されていないと、エアコンの熱交換機能が正常に働かず、冷暖房の効きが著しく低下してしまいます。
冷媒ガスが漏れているかどうかを判断するためには、いくつかのポイントを確認することが重要です。
まず、室外機のフィルターを取り外し、奥にある熱交換器の状態をチェックしてみましょう。
もし表面に霜が付着している場合は、冷媒が漏れている可能性が考えられます。
また、ガスが減少すると室内機の一部が過剰に冷却されるため、結露が発生しやすくなり、その結果として水漏れが起こるケースもあります。
さらに、室外機に接続されている配管に霜が付いている場合も、ガス漏れの兆候と言えます。
このような症状が見られた場合、冷媒漏れの可能性が高いと考えられるので、早めの点検や修理を検討することをおすすめします。
異常停止
天井カセットエアコンは、特に気温が高い夏場に動作が止まることがあります。
主な原因として、室外機が過熱することが挙げられます。
室外機が一定以上の温度になると、エアコン内部の電子機器を守るための安全装置が作動し、自動的に運転を停止させる仕組みになっています。
そのため、夏の暑い日に業務用エアコンが急に止まったとしても、必ずしも故障とは限りません。
通常は極端な高温でない限り制御は作動しませんが、空気の流れが妨げられるなどの理由で停止することもあります。
異常停止を解除するには、一度電源プラグを抜いて、数分間待った後に再度差し込みましょう。
その後、改めて運転を開始すると、正常に動作を再開することがあります。
異臭
天井カセットエアコンを使用していると、特有の臭いが気になることがあります。
特に、工場や倉庫などの現場では、作業員の汗や油、作業時に発生するさまざまな物質が混じるため、臭いの原因となる物質がエアコン内部に蓄積しやすくなります。
エアコンのフィルターは、こうした汚れをある程度除去できますが、完全に防ぐことはできません。
細かい汚れはフィルターを通過し、エアコン内部に入り込んでしまうのです。これが長期間蓄積されることで、イヤな臭いが発生する原因となります。
さらに、臭いの大きな要因の一つにカビの発生があります。エアコン内部は、結露によって湿気が溜まりやすく、そこに汗や油などの汚れが加わると、カビが繁殖しやすい環境になります。その結果、エアコンの風にカビの臭いが混じり、室内に不快なにおいが広がってしまいます。
異臭を予防するためにも、定期的なメンテナンスを心がけることが重要です。
水漏れ
天井カセットエアコンを使用していると、室外機の周囲に水が漏れ出ることがあります。
原因のひとつとして考えられるのが、排水ホースの詰まりです。
通常、エアコン内部で発生した水分はドレンホースを通じて屋外へ排出されますが、このホースが何らかの理由で詰まると、スムーズに排水できず、水漏れが発生することがあります。
例えば、エアコンが吸い込んだホコリや汚れがホース内に蓄積すると、排水の流れを妨げて逆流を引き起こす可能性があります。
また、ドレンホースの出口が地面に接していると、ゴミや水が溜まり、排水がうまくいかなくなることもあります。
天井カセットエアコンの導入を検討しよう!

今回は、天井カセットエアコンの仕組みについて紹介しました。
天井カセットエアコンの仕組みとして、室外機と室内機の連携により熱交換と空気の循環を行い、室内の温度を調節します。
また、天井にカセットエアコンは、スペースを取らずに快適な室内環境を提供できるため、オフィスや店舗などで広く採用されている業務用エアコンです。
業務用エアコンの新規導入や入れ替えを考えている方は、ぜひ天井カセットエアコンの導入を検討してみてください。