パススルー冷蔵庫は、厨房や業務用施設でよく使用されるタイプの冷蔵庫で、前後に扉があり、片方から食品や飲料を入れて、反対側から取り出すことができる冷蔵庫です。
本記事では、パススルー冷蔵庫の特徴ついて紹介していきます。
他にも「パススルー冷蔵庫のメリット・デメリット」や「パススルー冷蔵庫の選ぶポイント」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、パススルー冷蔵庫について理解を深めてみてください。
パススルー冷蔵庫とは?
パススルー冷蔵庫は、前後の両方に扉が付いており、どちらの側からも食品の出し入れが可能なタイプの冷蔵庫です。
この構造により、スペースに限りのある厨房などでも、作業効率が向上します。
例えば、下処理室でカットや洗浄などの作業を行った食材を、この冷蔵庫に収納すると、調理室側から直接その食材を取り出すことができます。
また、厨房と配膳スペース、仕込み室とホールなど用途の異なる作業エリア間をつなぐことで、作業動線を最適化し、業務の効率化を図るためにも活用されています。
パススルー冷蔵庫のメリット
パススルー冷蔵庫のメリットについては、以下の5つが挙げられます。
- 作業動線の効率化
- 業務分担がしやすくなる
- 空間を有効活用できる
- 在庫管理がしやすい
- 交差汚染のリスク軽減
それぞれのメリットについて解説していきます。
作業動線の効率化
パススルー冷蔵庫のメリットは、作業動線の効率化によって、厨房内の作業フローを飛躍的に改善できることが挙げられます。
調理担当者が用意した食材や料理をパススルー型の冷蔵庫に保管することで、スタッフは裏側からそれを受け取ることができます。
そのため、調理と配膳の動線が交わることなく、それぞれの作業を円滑に進めることが可能です。
このように、パススルー冷蔵庫は効率的な動線設計が業務全体のスピードと正確さに大きく貢献することができます。
業務分担がしやすくなる
パススルー冷蔵庫は、両面から出し入れができる構造のため、異なる作業を担当するスタッフ同士が同時に使用でき、業務を効率的に分担できます。
実際に、調理や配膳にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。
例えば、朝の準備段階で保存しておいた食材を、昼食の提供時にホール担当者がスムーズに取り出せるため、作業の流れが途切れることなく進行することができます。
空間を有効活用できる
パススルー冷蔵庫は、壁や仕切りの間に配置されることが多く、限られたスペースを効率的に使えるメリットが挙げられます。
従来の冷蔵庫では、食品の出し入れに正面の空間をある程度確保する必要がありました。
しかし、パススルー冷蔵庫では、前後どちらからもアクセスできるため、両側の通路を有効に使えます。
在庫管理がしやすい
ガラス扉付きのパススルー冷蔵庫を利用することで、両側から庫内の様子をすぐに視認できるため、在庫の確認や商品ピック作業が格段にスムーズになるメリットが挙げられます。
中の物の配置が視覚的に把握できることで、スタッフが必要な物を探す手間が減り、作業時間の短縮と業務全体の効率化が期待できます。
交差汚染のリスク軽減
パススルー冷蔵庫を活用して、厨房スペースと接客エリアを明確に分けることによって、食材や器具の汚染が互いに及ばないように管理でき、衛生面でのリスクが大きく抑えられます。
例えば、調理済みの料理は厨房側から収納スペースに移し、そこからホールスタッフが受け取って提供する流れにすれば、清潔な作業領域とそうでない領域をしっかり区別することができます。
実際に、飲食店経営では、衛生管理基準に則った店舗運営が求められており、こうしたレイアウトや動線の工夫が大切な要素と言えます。
パススルー冷蔵庫のデメリット
パススルー冷蔵庫のデメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 設置スペースの確保が必要になる
- 冷気が外に流出しやすくなる
- 価格が高い
- メンテナンスの手間が増える
それぞれのデメリットについて解説していきます。
設置スペースの確保が必要になる
パススルー冷蔵庫は前面と背面の両方に扉が設けられているため、一般的な冷蔵庫と比べて設置時により広いスペースを必要になるデメリットが挙げられます。
片側を壁に寄せて設置することができず、前後どちらからも人が行き来できる通路を確保する必要があるため、特にスペースに限りのある厨房やバックヤードでは設置が困難になることがあります。
また、壁を通して設置する場合には、建物の構造に関わる制限や、工事費用といった追加の課題も考慮する必要があります。
冷気が外に流出しやすくなる
パススルー冷蔵庫では、開け閉めの回数が多くなってしまうので、一般的な冷蔵庫に比べて冷気が逃げやすくなる傾向があります。
特に、両方の扉が同時に開かれてしまうと、庫内の冷気が一気に外に漏れ出し、内部の温度が急上昇するリスクがあります。
このような温度変化は、保存中の食材の鮮度や安全性に悪影響を与えてしまうのはもちろん、冷却機能への負担を増やす結果となり、結果的に電気代の上昇にもつながります。
価格が高い
パススルー冷蔵庫は、通常の冷蔵庫と比べて価格が割高になってしまうデメリットが挙げられます。
また、導入時には設置作業や関連する工事が必要となるケースも多く、それに伴う費用が発生してしまうので、導入初期の支出が多くなってしまう可能性があります。
さらに、冷却効率の観点からも消費電力が多くなりやすく、長期的には電気料金などの維持費が高くなるリスクもあります。
メンテナンスの手間が増える
パススルー冷蔵庫は、扉が二つある構造なので、ゴム製のパッキン部分が劣化しやすくなったり、隙間に汚れがたまりやすくなったりと、メンテナンスの手間が増えてしまうデメリットが挙げられます。
また、食品のかすや液体などが内部にこぼれた際には、掃除にかかる手間がさらに増えてしまうリスクがあります。
特に、開閉が頻繁に行われる施設では、定期的な清掃作業やパーツの交換が求められ、それに伴って維持費用も高くなってしまうデメリットも挙げられます。
業務用冷蔵庫の種類
業務用冷蔵庫には種類が存在し、それぞれの店舗のニーズに応じて選ぶことが大切です。
種類ごとに特徴や利便性が異なるため、これから業務用冷蔵庫を選定する際には、それぞれのタイプについて把握することが重要です。
具体的に、業務用冷蔵庫の種類については、以下の3つが挙げられます。
- 縦型冷蔵庫・縦型冷凍庫
- 縦型冷蔵冷凍庫
- 横型冷蔵庫(コールドテーブル)
それぞれの種類について解説していきます。
縦型冷蔵庫・縦型冷凍庫
縦型冷蔵庫・縦型冷凍庫は、冷蔵または冷凍のいずれか一方の機能のみを備えている仕様です。
縦型のデザインで横幅をあまり取らないため、厨房のスペースに余裕がない店舗でも配置しやすいのが特徴です。
特に、野菜などの冷蔵保存が必要な食材を多く扱う店舗では、冷蔵専用の縦型モデルが活躍します。
また、縦型の冷凍庫は、横に広い業務用冷凍ストッカーと比べて、設置スペースが限られていても多くの食材を効率よく収納できる点が魅力と言えます。
縦型冷蔵冷凍庫
縦型冷蔵庫冷凍庫は、冷蔵機能と冷凍機能の両方を備えているのが特徴です。
外見は似ていても、ドアの数や内部のレイアウトは製品ごとにさまざまです。
同じくらいの大きさに見える機種でも、冷蔵室と冷凍室の割合が異なることがあるので、各室の容量をしっかりとチェックすることが大切です。
縦型冷蔵冷凍庫を選ぶ際には、店舗で取り扱う食材の種類や量を踏まえて、必要なサイズを見極めるようにしましょう。
横型冷蔵庫(コールドテーブル)
横型冷蔵庫は「コールドテーブル」とも呼ばれ、横幅が広く、高さが抑えられたデザインが特徴です。
上部がフラットになっているので、そのまま作業スペースとして活用できる点が多くの飲食店でも採用されている冷蔵庫です。
省スペースを有効に使いたい現場にとって、実用的な業務用機器の一つです。
また、縦型の冷蔵庫と同様に、冷蔵専用と冷凍専用の他にも、冷蔵と冷凍の両方の機能を備えたモデルも存在します。
モデルごとに異なる仕様があるため、導入前には使用環境や設置場所との相性をよく確認して選ぶことが大切です。
パススルー冷蔵庫を選ぶポイント
パススルー冷蔵庫を選ぶポイントについては、以下の6つが挙げられます。
- サイズ
- 機能
- 容量
- 省エネ性能
- 作業動線
- メンテナンスのしやすさ
- 電源の種類
それぞれのポイントについて解説していきます。
サイズ
せっかく冷蔵庫を購入しても、設置場所に合わなければその機能を活かすことができないので、機器のサイズは選定時に注意すべきポイントの一つです。
選ぶ際には、冷蔵庫の本体サイズを確認するのはもちろん、実際に設置するスペースの広さや、搬入時に通るルートも事前にチェックしておく必要があります。
また、厨房内での作業のしやすさも考慮して、無理のない設置ができる大きさを選びましょう。
さらに、厨房機器の位置関係や作業スタッフの人数、冷蔵庫の扉を開け閉めする際に必要な空間など細かな要素にも目を向けることが大切です。
機能
パススルー冷蔵庫を選ぶ際には、搭載されている機能によって使い勝手が大きく左右されるため、慎重に確認することが重要です。
例えば、冷蔵機能のみに特化したものや冷凍専用タイプや両方の機能を兼ね備えた複合型など基本性能だけでも様々な選択肢が挙げられます。
また、扉の開き方や構造にも違いがあり、両側から出し入れ可能なパススルー型や中の様子がひと目でわかるガラス扉タイプなど用途に応じたバリエーションも豊富です。
テーブル型のモデルでは、天板部分にシンクが一体化された舟形シンクタイプやホテルパンの収納に便利な引き出し式のドロワータイプといった種類も存在します。
このように、取り扱う食材の種類や厨房の業態に応じて、必要な機能をしっかり備えた機種を選定することが重要と言えます。
容量
飲食店では、取り扱う料理の内容や営業スタイルによって、使う食材の種類や量が大きく異なるので、業務用冷蔵庫を選ぶ際には、実際の運用に合わせた容量を見極めることが重要です。
例えば、家庭用冷蔵庫の約2倍にあたる1,600リットル以上の大型モデルもあります。
しかし、大きければ良いというわけではなく、容量が増えると本体サイズも大きくなり、消費電力も比例して上がるため、必要な分だけの容量を備えた冷蔵庫を選ぶことが省エネの観点で選ぶことも重要です。
使用予定の食材量を把握したうえで、店舗に最適なサイズを選びましょう。
省エネ性能
パススルー冷蔵庫は業務用冷蔵庫なので、一日中休まずに稼働し続けることが一般的なため、電力の使用効率、つまり省エネ性能が重要になります。
たとえ電力消費がわずかに違うだけでも、長期間使用を続ければ、それが電気料金に大きく影響してくるのも事実です。
そのため、初期投資だけでなく、長い目で見たときのランニングコストを考慮し、省エネ性能に優れた機種を選ぶことで、トータルの経費を抑えられる可能性が高くなります。
作業動線
パススルー冷蔵庫を設置する場所によっては思わぬ支障が出ることがあるので、作業動線も考慮して選ぶようにしましょう。
例えば、壁との距離が近すぎると扉の開け閉めがスムーズにできなかったり、冷蔵庫が通路にはみ出してしまい、人の移動を妨げたりするケースもあります。
このような状況になると、日々の作業効率が大きく低下してしまう可能性があります。
そのため、冷蔵庫を配置する際には、作業中の人の動きや動線をしっかりと考慮しながら、最適な設置場所を決定することが大切です。
メンテナンスのしやすさ
パススルー冷蔵庫を選ぶ際には、メンテナンスのしやすさで選ぶことも重要になります。
業務用冷蔵庫は使用頻度が高く、扉の開け閉めが多くなるので、内部や扉まわりに汚れがたまりやすいという特徴があります。
例えば、収納部分が凹凸の少ないシンプルなデザインであれば、拭き掃除もスムーズに行えるので、衛生的な状態を保ちやすくなります。
また、取っ手の形状が手入れしやすいかどうか、またフィルターの交換時期を知らせてくれる機能があるかといった点なども確認することをおすすめします。
電源の種類
パススルー冷蔵庫を選ぶ際には、使用する電源の種類に注意が必要です。
主に「単相100ボルト」と「三相200ボルト」の2つが存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。
単相100Vタイプは、ご家庭でよく使われる一般的なコンセントに対応しており、特別な工事をしなくてもすぐに使用可能です。
一方、三相200Vタイプは、より高出力な電力を必要とするため、特別な形状のコンセントが必要となり、多くの場合、専門の電気工事が求められます。
このように、購入前には設置場所のコンセント形状を確認し、設備環境に合ったパススルー冷蔵庫を選ぶことが大切です。
パススルー冷蔵庫で作業を効率化しよう!
今回は、パススルー冷蔵庫の特徴やメリット・デメリットを紹介しました。
パススルータイプの冷蔵庫は、限られたスペースを有効に活用できるだけでなく、作業の効率化や衛生レベルの維持にも大きく貢献する業務用冷蔵庫です。
特に、スムーズな動線や時間の短縮が求められる現場などでは、効果を最大限に活用することができます。
また、作業の分担がしやすくなり、食品の取り扱いもより安全かつ迅速に行うことができます。
今回の記事を参考にして、パススルー冷蔵庫で作業を効率化してみてください。
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