業務用エアコンは、オフィスや店舗などさまざまな施設で幅広く活用されています。
快適な空調環境を実現するためには、設置場所の特性や使用目的に応じて、適切に業務エアコンを選ぶことが欠かせません。
適切に選定することで、空間全体が心地よく保たれるだけでなく、エアコンの省エネ運転や長寿命化にもつながります。
本記事では、業務用エアコンの選び方を紹介します。
他にも「業務用エアコン導入前に確認するポイント」や「業務エアコン導入で業者を選ぶ際のコツ」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、業務用エアコンの選び方について理解を深めてみてください。
業務用エアコンの選び方
業務用エアコンを導入する際には、設置する環境や用途に応じた製品を選ぶことが重要です。
適切な冷暖房能力や形状を見極めずに選定してしまうと、空調効率が落ちて電気代が無駄にかかってしまうのはもちろん、十分な快適性が得られなくなってしまうリスクもあります。
具体的に、業務用エアコンの選び方については、以下の5つが挙げられます。
- 用途
- 馬力
- 形状
- 機能
- 省エネ効率
それぞれの項目について解説していきます。
用途
業務用エアコンを選ぶ際には、設置予定の場所の状況や使用目的をしっかりと把握することが大切です。
一般的には空間の広さをもとに機種を選びますが、実際にはその空間にある設備や人数、さらには使用環境によって、最適なエアコンの種類や能力が異なってきます。
たとえば、鉄板焼きや鍋物など高温を発する料理を提供する飲食店では、客席に調理器具が配置されているので、室内温度が上昇しやすい傾向にあります。
そのような場合には、標準的な出力よりも高い冷房能力を持つ機種を選ぶことで、温度ムラを抑え、快適な空間を保つことが可能です。
一方で、冷蔵ケースや冷凍ショーケースを多く配置している生鮮食品コーナーでは、逆に室温が下がりやすくなるため、必要以上に冷やしすぎないよう出力を抑えたエアコンを選ぶことが重要です。
このように、業務用エアコンは使用用途によって、選定すべき仕様が変わってくるため、事前に確認しておくようにしましょう。
馬力
馬力とは、エアコンの性能や出力を表す指標のことを指します。
業務用エアコンのラインアップとしては、おおよそ1.5馬力から12馬力まで存在し、目安として1馬力はおよそ11平方メートルの空間に対応しています。
しかし、設置環境や利用条件によって適切な馬力はことなるので、あくまでもこの数値は参考値であり、実際の導入時には空間特性に応じた見積もりが重要です。
業務用エアコンを適切に選ぶためには、まずその空間の冷暖房の必要量(負荷)を計算することが不可欠です。一般的な算出方法は以下の通りです:
- 床面積(m²) × 負荷基準値(W/m²)= 必要冷暖房能力(kW)
負荷基準値は部屋の構造や用途、窓の数、断熱性能などさまざまな要素に左右され、この計算結果を基に、どの馬力の機種がふさわしいかを判断することができます。
形状
業務用エアコンには、床に置くタイプや天井に組み込むタイプ、複数の吹き出し口を備えたモデルなど多種多様なバリエーションが存在します。
タイプごとに、冷暖房の効率や最適な設置場所が異なるので、選定時には注意が必要です。
快適な空間づくりのためには、設置する環境や内装のデザイン、利用目的に応じて、最も適した機種を見極めて導入することが重要です。
具体的に、業務用エアコンの形状については、以下が挙げられます。
- 壁掛形
- 床置形
- 天井吊形
- 天井カセット形
- 天井埋込ダクト形
- ビルトイン形
それぞれの形状について解説していきます。
壁掛形
壁掛けタイプの業務用エアコンは、見た目が家庭用エアコンとよく似ており、手軽に導入できる点が特徴です。
設置にかかる工事費用は、1.5〜2.5馬力の単独運転タイプでおおよそ3万8千円から4万円程度と比較的低コストで導入することが可能です。
しかし、風の届く範囲がやや限られ、特に左右方向には空気が行き渡りにくく、室内に温度の偏りが生じやすいという短所もあります。
このように、壁掛形業務用エアコンは、設置スペースに制約がある小規模なオフィスや店舗などには特に適していると言えます。
床置形
床置形は、床に直接設置するタイプの業務用エアコンです。
設置作業が比較的簡単なので、設置費用を抑えられる点が魅力的と言えます。
設置や定期的な点検がしやすく、扱いやすいので多くの施設で導入されています。
また、床に設置されることで冷暖房の効率が高まり、天井が高い倉庫や工場など、広い空間でもしっかりと対応可能です。
しかし、吹き出し口が一方向なので、室内の温度が均一になりにくく、配管が露出してしまうケースも見られます。
天井吊形
天吊形業務用エアコンは、天井から本体を吊り下げる形式で設置されるエアコンです。
天井内部に本体を収めるスペースが確保できない建物でよく選ばれています。
露出した配管や、吹き出し口が1つしかないことで空気の流れに偏りが生じやすいというデメリットがありますが、設置が比較的スムーズで、周囲の内装デザインに馴染みやすいというメリットがあります。
そのため、開放感のあるオフィス環境や学校、あるいは内装にこだわった店舗など、多様な空間で導入されています。
天井カセット形
天井カセット形とは、天井裏に本体を設置し、空気の吹き出し口のみが天井面に見える構造の室内機です。
見た目が非常にすっきりしており、インテリアに調和しやすいことから、多くの場所で広く採用されています。
吹き出し口の種類も多様で、1方向や2方向、さらには4方向や360度対応など、空間の形状や用途に応じて適切なタイプを選ぶことができます。
特にオフィスや商業施設など、効率と見た目の両立が求められる場所での柔軟性が高いと言えます。
天井埋込ダクト形
天井埋込ダクト形業務用エアコンは、吹き出し口と吸気口が本体とは別に設けられているので、店舗の間取りや建物の仕様に応じた柔軟な配置が可能です。
他の形状と比べると、必要な部品や工事費がやや高くなる傾向がありますが、室内に空調機器の存在感を与えず、デザイン性を重視する飲食店や高級旅館、ホテルの客室などに特に適しています。
ビルトイン形
ビルトイン形業務用エアコンは、天井内部に室内機本体を設置し、空気の吹き出し口は別の位置に配置してダクトで接続する方式を採用しています。
この構造により、1台の室内機に対して複数の吹き出し口を取り付けることができます。
さらに吹き出し口を本体から離れた場所に設けられるので、複雑なレイアウトやパーティションで仕切られた空間にも柔軟に対応できます。
機能
オフィスをより心地よく働ける場所に整えるには、業務用エアコンの機能性で選ぶことも重要です。
業務用エアコンの機能として、以下が挙げられます。
機能 | 内容 |
換気機能 | 室内に新鮮な外気を取り込むことで、ウイルスや細かい粉じんを減らし、清潔で安心できる環境を整えることができます。感染症の予防対策としても有効で、社員の健康を守りながら快適な作業空間を維持することにつながります。 |
空気清浄機能 | 空気中のアレルゲンやホコリを取り除く空気清浄機能がエアコンに内蔵されていれば、呼吸が楽になり、アレルギー体質の人にもおすすめです。 |
自動クリーニング機能 | 内部に溜まる汚れやカビを防ぐには清掃が不可欠ですが、自動でフィルターを掃除してくれる機能があれば、清潔さを保ちつつ、エアコンの運転効率も向上します。 |
上記のように、業務用エアコンを機能で選ぶことで、施設の快適さをさらに高めることにもつながります。
省エネ効率
業務用エアコンを選ぶ際には、省エネ性能を重視することが結果的に経費削減につながります。
省エネ効率を確認する方法として、エネルギー効率を示す「APF(通年エネルギー消費効率)」や「COP(成績係数)」などの指標があり、これらの値が高いほど、少ない電力で効率よく冷暖房できることを意味します。
また、製品に表示されている省エネに関する情報も確認するようにしましょう。
さらに、機種によってはインバーター機能が搭載されている業務用エアコンも多くあります。
インバーター機能とは、、運転状況に応じて出力を調整し、電力のムダを抑えることが可能です。
このように、それぞれの指標や機能を比較検討しながら、省エネに優れたエアコンを選ぶことが重要です。
業務用エアコン導入前に確認するポイント
業務用エアコン導入前に確認するポイントについては、以下の3つが挙げられます。
- 設置場所
- 工事内容
- アフターサポート
それぞれのポイントについて解説していきます。
設置場所
業務用エアコンを導入する際には、最初に室内機と室外機の設置場所について十分な検討が必要です。
室内機は、設置する位置によって空気の流れや温度のばらつきが発生しやすくなるため、空調の効率を左右する重要な要素となります。
一方、室外機には外気を取り込んだり、室内の熱を外へ排出したりする働きがあり、周囲に壁や物が密接しているとその性能が発揮できなくなるリスクがあります。
そのため、両機器がスムーズに機能するよう、周辺のスペースに余裕があるかどうかを事前に確認することが不可欠です。
工事内容
業務用エアコン導入前には、どのような工事が行われ、どれくらいの期間を要するのかを明確にしておきましょう。
天井や壁に穴を開ける作業では、騒音や振動が発生することもあり、あらかじめ周囲へ通知しておく配慮が求められる場合があります。
また、工事中は安全確保のため現場周辺への立ち入りが制限されることがあるので、予定通りに作業が進んでいるかを定期的に確認することが重要です。
アフターサポート
業務用エアコンを導入する際には、アフターケアやサポート体制に注目することが重要です。
サービスの提供範囲やサポート期間などに違いがあるので、事前にしっかりと内容を把握しておきましょう。
また、導入後のトラブルにも落ち着いて対応できるよう、点検や修理を引き受けてくれる信頼できる業者を選定しておくことをおすすめします。
業務エアコン導入で業者を選ぶ際のコツ
業務エアコン導入で業者を選ぶ際のコツについては、以下の3つが挙げられます。
- 事前調査や提案をしてくれるか
- 有資格者が在籍しているか
- フロンガスを正しく処理してくれるか
それぞれのコツについて解説していきます。
事前調査や提案をしてくれるか
業務エアコン導入で業者を選ぶ際のコツとして、事前調査や提案をしてるかどうかを確認するようにしましょう。
実際に、業務用エアコンは、設置される建物の構造や部屋の使われ方、さらに業種の特性によって、最適なタイプが異なります。
そのため、事前に現場を訪れて環境をしっかりと確認し、その上で機種選びをおこなう業者であれば、最適な業務用エアコンを提案してくれる可能性が高くなります。
有資格者が在籍しているか
業務エアコン導入で業者を選ぶ際には、有資格者が在籍しているかどうかを確認しましょう。
業務用エアコンの設置作業には、誰でも行える工程と、国家資格を持つ専門家でなければ実施できない作業が含まれるので、施工の内容によっては対応できる範囲が限られてしまいます。
そのため、安全かつ確実な設置をおこなうためにも、電気工事士などの有資格者が在籍する信頼できる業者に依頼することをおすすめします。
フロンガスを正しく処理してくれるか
業務用エアコンを処分する際には、内部に使用されているフロンガスの取り扱いに注意が必要になるので、業者を選ぶ際には、フロンガスを正しく処理をしてるかどうかも確認しておきましょう。
フロンガスは、法律により適切に回収することが義務付けられており、定められた手続きに従わずに大気中へ放出した場合、その責任は依頼主になってしまうリスクもあります。
そのため、廃棄を依頼する際は、法令に則った適正な回収作業を行ってくれる信頼できる業者を選ぶことが重要です。
業務用エアコンは慎重に選ぼう!
今回は、業務用エアコンの選び方を紹介しました。
業務用エアコンを選ぶ際には、設置場所の特性や使用目的に応じて慎重に選定する必要があります。
万が一、適さない業務用エアコンを選んでしまうと、思わぬトラブルに繋がる可能性があるので注意が必要です。
今回の記事を参考にして、業務用エアコンは慎重に選ぶようにしましょう。
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