パッケージエアコンとは、飲食店やオフィスで使用されている業務用のエアコンです。
室外機1台で、同性能の室内機を複数稼働できるのが特徴ですが、その基本的な仕組みはどうなっているのでしょうか。
パッケージエアコンの基本的な仕組みから、メリットやデメリット、また導入時に意識したい選び方のポイントについても解説していきます。
パッケージエアコンを導入する設備の広さや用途、インテリアなどを総合的に判断し、最適なタイプを選べるよう知識を身に着けていきましょう。
パッケージエアコンとは
パッケージエアコンとはどんなエアコンで、家庭用エアコンとどんな違いがあるのでしょうか。
まずはパッケージエアコンの基本的な事柄についてご説明します。
- パッケージエアコンの基礎知識
- 家庭用エアコンとの違い
パッケージエアコンの基礎知識
パッケージエアコンとは業務用エアコンのひとつで、室外機から室内機への給電が一括で行われます。
「ひとまとまりにする」という意味があるパッケージという言葉をとり、パッケージエアコンと呼ばれています。
ひとつの室外機で複数の室内機を稼働させる仕組みになっていて、室外機を稼働すると接続されている全ての室内機が稼働します。
家庭用エアコンよりも広範囲の空調を整えられますので、業務用に最適です。
家庭用エアコンとの違い
家庭用エアコン(ルームエアコン)は普段自宅で使用しているエアコンで、1台の室内機に対して1台の室外機が設置されています。
家庭用エアコンは、「8畳用」「12畳用」というように一部屋の空調を整えるためのものとして使用されます。
家庭では馬力が大きなエアコンは必要ないため、
パッケージエアコンと比較すると設置の手軽さや省エネといった面に特化しています。
フィルター自動掃除機能や空気清浄機能など、暮らしを快適にしてくれる機能が備わったタイプもあります。
パッケージエアコンの仕組み
パッケージエアコンの構造や部品などの仕組みについて、ご説明します。
- 圧縮機
- 四方弁
- 膨張弁
- 熱交換器
- 冷媒ガス
- パッケージエアコンのサイクル
圧縮機
通常「コンプレッサ」と呼ばれる部分で、エアコンの心臓部となるのが圧縮機です。
圧縮させた冷媒ガスを流すポンプのような役割をする部分で、室外機に搭載されています。
冷房時には室内熱交換器から室外熱交換器へ冷媒ガスを圧縮して送り、暖房時はその逆へ冷媒ガスを送る仕組みです。
いかに少ない電力で効率よく冷媒ガスを循環させられるかが、エアコン性能の肝となります。
圧縮機の性能が空調管理の性能を高めるといっても過言ではありませんので、信頼できるものを選びましょう。
四方弁
エアコンの冷房と暖房を切り替えるための部品が四方弁です。
圧縮機から送られる冷媒ガスの流れを切り替えるのが主な役割で、冷房時は冷媒ガスを室外熱交換器へ、暖房時は冷媒ガスを室内熱交換器へと送ります。
圧縮機の「吸入」「吐出」「室内熱交換器」「室外熱交換器」の四方向への流れを制御するため四方弁という名前がついています。
膨張弁
膨張弁は、冷媒ガスの圧力を下げて温度を低下させる役割がある部品です。
四方弁とは逆側に設置されているもので、膨張弁内で通り道を狭くして冷媒ガスの密度を下げていきます。
冷房は圧力が高い方から低い方へと流れていきますので、道幅を調節してエアコンの効率を安定させています。
熱交換器
パッケージエアコンには熱交換器があり、室内機と室外機にそれぞれ備わっています。
冷房時には室外機の熱交換器が、暖房時には室内機の熱交換器が放熱の役割を果たします。
冷媒ガス
冷媒ガスとは、エアコンの熱を移動させるための気体の総称です。
エアコンの冷媒ガスの具体例は、「フロン32」「HFC32」「R32」などの代替フロンです。
液体は気体になる時に周囲から熱を奪い、気体は液体になる時に周囲に熱を放出するという性質があります。
この冷媒ガスの特性を利用して空調管理が行われています。
パッケージエアコンのサイクル
パッケージエアコンの基本のサイクルとして、以下のような仕組みを覚えておきましょう。
4つの行程を繰り返し行い、空調管理をしていきます。
サイクル行程 | 仕組み |
---|---|
凝縮行程 | 冷媒ガスから熱を奪い 凝縮させる |
膨張行程 | 液冷媒の圧力を下げる |
蒸発行程 | 液冷媒を蒸発させて 熱を奪う |
圧縮行程 | 蒸発した冷媒ガスを圧縮し 高温高圧の冷媒ガスにする |
家庭用エアコンやパッケージエアコンの仕組みは基本的には同様で、このようなサイクルで室内機が冷風や温風を放出していきます。
パッケージエアコンのメリット
パッケージエアコンには、主に以下のようなメリットがあります。
- 広範囲の空調管理ができる
- 室外機のスペース確保が不要
- 導入コストを抑えられる
広範囲の空調管理ができる
業務用に使われるパッケージエアコンは、広範囲の空調管理ができるのが大きな特徴です。
家庭用エアコンはエアコン1台に対して1台の室外機が必要ですが、パッケージエアコンであれば室外機が1台で複数の部屋のエアコンを同時に稼働できます。
部屋の数が多いオフィスなどは、パッケージエアコンが向いています。
家庭用エアコンより馬力が大きいので、家庭用エアコンでは対応しきれない広さの空調管理にも向いています。
室外機のスペース確保が不要
エアコン1台に対して1台の室外機を設置するには、室外機のスペースも確保しなくてはいけません。
室外機はスペースがあればどこでも良いというわけではなく、雨や直射日光を避けた風通しの良い場所を選ばなくてはいけません。
テナントや広範囲のオフィスなどで、エアコンを設置したいけど室外機を置くスペースがないという場合にパッケージエアコンが向いています。
導入コストを抑えられる
パッケージエアコンは業務用エアコンなので、導入コストが高額になるかと思われがちです。
しかし室外機が1台で良いので、結果的には導入コストを抑えられるようになります。
パッケージエアコンは電源もひとつなので、配管工事などの工事費も抑えられます。
電気代などのランニングコストが気になる方もいるかもしれませんが、パッケージエアコンにもいくつか種類があり、人検知センサーや自動温度調節機能を搭載した節電を意識したモデルもあります。
導入コストとランニングコストを考え、条件に合うパッケージエアコンを選びましょう。
パッケージエアコンのデメリット
パッケージエアコンは広範囲の空調管理ができるのがメリットですが、複数の部屋に設置した場合に
部屋ごとでの温度調節ができないのがデメリットです。
一部屋ごとの細かい調節やオンオフをできる状態にしたいのであれば、マルチエアコンのように個別に室内機を稼働させられるタイプがいいでしょう。
またパッケージエアコンは冷媒配管の自由度も低いので、希望通りの場所に設置できないという悩みが出てくるかもしれません。
建物の形状や構造によりますので、詳しくはご相談ください。
パッケージエアコンの種類
業務用のエアコンとして設置されるパッケージエアコンですが、パッケージエアコンにもいくつか種類があるのでご紹介します。
用途や広さなどに合わせて、最適なパッケージエアコンを選べるようにしておきましょう。
- 店舗・オフィス用エアコン
- 業務用マルチエアコン(ビル用マルチエアコン)
- 設備用・工場用エアコン
店舗・オフィス用エアコン
オフィスや飲食店、美容室や病院などの店舗で使用されるエアコンです。
パッケージエアコンといえば、このタイプを指す場合が多く、1台の室外機に対して1~4台の室内機が設置できます。
仕切りのないワンフロア店舗など、複数台の室内機があると温度ムラが生じにくくなります。
デメリットは室内機ごとでの調整ができないため、全てを同時にオン・オフしなければいけないという点です。
業務用マルチエアコン(ビル用マルチエアコン)
店舗・オフィス用のエアコンよりも馬力が強く、
ビル1棟を想定したパッケージエアコンです。
店舗・オフィス用エアコンとの大きな違いは、室内機の個別運転が可能であり、温度調節の自由度が高いという点です。
店舗・オフィス用のエアコンより冷媒配管が長いという特徴があり、設置の自由度も高いです。
設備用・工場用エアコン
工場や倉庫、ホールなどの特殊な広い空間に使用されるエアコンです。
大規模施設であれば対人空調を、商品や品物の管理を優先させるのであれば油煙・粉塵などに対応できるエアコンがあります。
広い空間の空調管理はもちろん、エリアを狙った空調管理ができるタイプもあります。
用途や目的、設置場所に合わせて適切なエアコンを選びましょう。
パッケージエアコンの選び方
パッケージエアコン選び方のポイントについて、
お伝えします。
- メーカーで選ぶ
- 形状で選ぶ
- 馬力で選ぶ
- ランニングコストで選ぶ
メーカーで選ぶ
パッケージエアコンのメーカーで選ぶのであれば、長年シェア1位を獲得している「ダイキン」からチェックしてみましょう。
他に有名メーカーでは、「三菱電機」「日立」「東芝」「パナソニック」などが挙げられます。
ダイキンは業務用エアコンシェア1位、世界売上ランキングも1位と人気のメーカーです。
しかしそれぞれのメーカーに特徴があり、例えば
三菱電機はセンサー機能に優れていますし、コストを抑えたい場合は東芝がおすすめです。
形状で選ぶ
パッケージエアコンの室内機には、いくつかの形状があります。
- 天井カセット型
- 天井吊型
- 壁掛型
- 床置型
- ビルトイン型
- 天井埋め込みダクト型
天井カセット型は、4方向・2方向・1方向など吹き出し口の数も選べます。
形状だけでなく馬力も異なりますので、設置場所やインテリアによって適したタイプを選んでいきます。
馬力で選ぶ
パッケージエアコンの能力や強さの表現として、
馬力という言葉が使われます。
1馬力は2.8kwに相当するとされており、だいたい
8畳くらいの空調管理能力があると考えるのが適切です。
ただ単純に広さだけで馬力を選べばよいというわけではありません。
「静かに仕事をするオフィス」と「火を使う上に人の往来が多い飲食店」では、飲食店の方が馬力に余裕があった方が良いと考えられます。
例えば、5馬力のパッケージエアコンであれば、オフィスで24〜36坪、飲食店なら11〜18坪程度が目安となります。
パッケージエアコンを長く維持するために
パッケージエアコンの耐用年数は、一般的に10年~15年といわれています。
できるだけ長くパッケージエアコンを維持するために、シチュエーション別のポイントをお伝えします。
- 飲食店のパッケージエアコン
- 美容室やペットショップのパッケージエアコン
- 工場のパッケージエアコン
飲食店のパッケージエアコン
飲食店でパッケージエアコンを使っていると、油汚れや煙、水蒸気による汚れの付着が故障の原因となりやすいです。
また調理場で使用していると温度差が激しくなるため負担がかかりますし、ゴキブリやネズミの侵入による故障も珍しくありません。
設置する時に熱を逃がしやすい場所を選ぶ、フィルターをこまめに掃除・交換するなどの配慮をしておくようにしましょう。
美容室やペットショップのパッケージエアコン
美容室やペットショップでは飲食店のような油は気にならないかもしれませんが、毛髪や動物の毛には油分が含まれていますので汚れが蓄積するとエアコン故障の原因となります。
またヘアスプレーが室内機に入りこむと、フィルター詰まりを起こしてしまう可能性があります。
フィルターのこまめな掃除・交換や、使用後の送風運転も効果的です。
エアコンの室内機から部品を取り出して洗浄するオーバーホールも行っていきましょう。
工場のパッケージエアコン
工場では、目に見えない粉塵や油がエアコンのフィルターに入り込むので、故障の原因となります。
特に長時間の空調管理が求められる工場では故障が起きやすいので、定期的にクリーニングをするなどのメンテナンスをしていく必要があるでしょう。
目的に合うパッケージエアコンを選ぼう
一口にパッケージエアコンと言っても、多様な種類があります。
パッケージエアコンの種類だけでなく、どういった場所に設置するのかという点もしっかり考慮していく必要があります。
「飲食店なのか、病院なのか」では、パッケージエアコンに求められるものは違うかもしれません。
鶴橋冷熱工業はパッケージエアコンやマルチエアコンの設置に関して実績がありますので、具体的なご相談に対応可能です。
パッケージエアコンをご検討の方は、是非鶴橋冷熱工業にご相談ください。
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