ブラストチラーは、調理後の熱々の食品を素早く冷却するために使用される専用の装置です。
一方、急速凍結庫は、粗熱が取れた食品を短時間で凍結させるための装置として設計されています。
本記事では、急速凍結庫とブラストチラーの違いについて紹介します。
他にも「急速凍結庫とブラストチラーを選ぶポイント」や「急速凍結庫とブラストチラーを使用する際の注意点」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、急速凍結庫とブラストチラーについて理解を深めてみてください。
急速凍結庫とブラストチラーの違い

急速凍結庫とブラストチラーの違いは、主に投入できる食品の温度帯によるものです。
急速凍結庫は、粗熱が取れた食品を約-20℃まで短時間で冷凍するための機器のことです。
一方、ブラストチラーは約90℃の高温食品を投入し、0~10℃に素早く冷却することができる装置を指します。
これらの装置を選ぶ際に重要なのは、どの工程で使用するのが最適かをしっかりと考えることが重要です。
また、適切な用途に合わせて選ばなければ、食材の品質を損なったり、最悪の場合は廃棄せざるを得なくなるリスクがあるのも事実です。
このように、急速冷却や冷凍の過程でどれだけ菌の繁殖を抑える必要があるかを見極めた上で、最適な機器を導入することが大切と言えます。
急速凍結庫の特徴

急速凍結庫はショックフリーザーとも呼ばれており、食品をおよそ3℃から-18℃程度まで迅速に冷凍するために設計されている機械です。
食品内の水分が凍結する際、-1℃から-5℃という温度帯を短時間で通過させることで、細胞構造の損傷を抑えることができ、冷凍前の風味や食感をしっかりと維持し、美味しさを保つことが可能です。
また、旬の食材や特売時に購入した食材を急速に凍結して保存すれば、コストを抑えたり、食品ロスを減らしたりすることができます。
具体的な急速凍結庫の特徴については、以下の4つが挙げられます。
- 品質のムラが無くなる
- 添加物を使用せずに保存ができる
- 廃棄物の削減につながる
- 商圏が広がる
それぞれの特徴について解説していきます。
品質のムラが無くなる
急速凍結庫を活用することで、食品をムラなく均一に凍結させることが可能です。
一般的な冷凍庫は比較的高い温度で時間をかけて凍らせる「緩慢凍結」という方法を採用しており、食品の置き場所や冷気の当たり具合によって凍るスピードに差が生じ、結果として品質にムラが出てしまうリスクがあります。
それに対し、急速凍結庫は低温で食品全体を一気に凍結させる技術が採用されています。
そのため、味が損なわれたり、形が崩れたりするのを防ぎながら、高品質で安定した冷凍食品の提供が可能になります。
添加物を使用せずに保存ができる
急速凍結庫を使用することで、食品に着色料や安定剤、防腐剤などといった添加物を加えなくても、その品質を維持することが可能になります。
一般的に食品添加物は、保存性の向上や栄養価の維持、さらには見た目や味の品質を高める目的で使われます。
添加物は各国の厳しい基準に基づいて使用されており、安全性は確保されており、添加物を含む食品が必ずしも健康に悪いわけではありません。
しかし。、添加物が身体に及ぼす影響を懸念し、それを避けようとする消費者が多いのも現実です。
このように、急速冷凍の技術を活かした冷凍食品は、添加物を使わずに美味しさを保てるので、食品添加物を気にする人々にも魅力的と言えます。
廃棄物の削減につながる
急速凍結庫を使用することで、廃棄物の削減につながります。
実際に、料理を作ったのに食べきれず、捨てる羽目になってしまうケースも少なくありません。
通常の冷凍庫では食材を数日以内に使い切らなければなりませんが、急速冷凍技術を利用すれば、鮮度を保ったまま長期間保存することが可能です。
食べ物を廃棄することは経済的な負担となるだけでなく、可燃ごみとして処理される過程でCO2の排出も増加してしまうデメリットも挙げられます。
急速冷凍技術の活用が進めば、食品ロスを削減し、環境保護にも寄与することが期待できます。
商圏が広がる
急速冷凍は短時間で食品を凍結できるので、長期間の保存が可能となり、効率的な管理によって、商圏を広げることができるメリットが挙げられます。
例えば、収穫期が限られている農産物や特定の季節に需要が増加する商品でも、急速冷凍を活用することで事前に準備ができ、計画的な生産体制を整えることが可能です。
また、繁忙期や大量注文が発生した場合でも、冷凍保存された商品を使用することで、必要な商品をスムーズに提供でき、人件費削減にも貢献します。
このように、急速凍結庫を活用することによって、生産性の向上が見込めると言えます。
ブラストチラーの特徴

ブラストチラーは、調理後の熱い食品を素早く冷却し、食品の中心温度を約3℃まで短時間で下げることができる機器です。
急速冷却により、食品から蒸気と共に失われがちな水分や香り、色合いの変化を抑え、時間経過による品質低下を防ぐことが可能です。
また、細菌が増殖しやすいとされる温度帯を短時間で通過させることで、食中毒のリスクを大幅に減少させる効果もあります。
具体的なブラストチラーの特徴については、以下の4つが挙げられます。
- 菌の繁殖を防ぐ
- 調理効率の向上
- 商品の品質が高まる
- 食品ロスの削減
それぞれの特徴について解説していきます。
菌の繁殖を防ぐ
ブラストチラーを使用する事によって、菌の繁殖を防ぐことが可能です。
自然に冷ます方法では、食品が細菌が繁殖しやすい温度帯(約10~60℃)をゆっくり通過してしまい、食中毒のリスクが高くなってしまいます。
一方で、ブラストチラーを使用すれば、菌が繁殖しやすい温度帯を短時間で通過させることが可能です。
そのため、細菌の増殖を抑えるだけでなく、食品への異物混入や細菌の付着といった問題も防ぎ、安全性を高めることができます。
調理効率の向上
ブラストチラーは、加熱した食品をそのまま熱々の状態で収納できるので、これまで必要だった粗熱を取る手間や冷却にかかる時間を大幅に削減できます。
また、機器の種類によって異なりますが、ホテルパンをそのまま使用可能な設計なので、食材の形状に制約を受けないメリットも挙げられます。
調理現場では作業効率が向上し、削減された時間を他の業務に充てることができるので、業務効率化にもつなげることが可能です。
商品の品質が高まる
ブラストチラーを使用することで、商品の品質を高めることにつながります。
実際に、調理済みの食品は、通常、自然に冷ますと徐々に水分が蒸発し、香りや色合いも失われることがあります。
その結果、乾燥しやすく風味が損なわれ、できたての美味しさが薄れてしまいます。
しかし、ブラストチラーを使用して急速冷却を行うと、食品内の「旨み・香り・水分」を効果的に閉じ込めることが可能で、再加熱後でも風味豊かで美味しい状態を保つことができます。
自然冷却に比べて、ブラストチラーを使った急速冷却は時間を短縮できるので、食品が乾燥したり風味が飛んでしまうリスクを大幅に減らせます。
このように、冷却後も調理直後に近い美味しさや食感を楽しむことができるのが大きな特徴です。
食品ロスの削減
ブラストチラーを使用することで、調理したばかりの料理や加熱加工された食品を冷却・凍結することで、保存が可能となり、計画的に調理を進めることで食材の無駄を抑えることができます。
特にブラストチラーを活用すれば、食品を素早く冷却した後、冷蔵庫で4〜5日間程度保存することができます。
例えば、病院や介護施設など、限られたスタッフで一度に多くの食事を準備しなければならない状況でも、ブラストチラーを活用することで調理工程に余裕を持たせ、食材の無駄を減らすことが期待できます。
急速冷凍庫とブラストチラーの選ぶポイント

急速冷凍庫とブラストチラーの選ぶポイントについては、以下の4つが挙げられます。
- 手入れのしやすさ
- サイズ
- 使い勝手
- アフターケア
それぞれのポイントについて解説していきます。
手入れのしやすさ
急速冷凍庫とブラストチラーの選ぶポイントとして、手入れのしやすさが挙げられます。
実際に、日常的に使うアイテムだからこそ、清潔さを保つことは重要になるので、手入れの簡単さは事前にチェックしておくべきポイントです。
例えば、庫内をまるごと洗えたり自動で乾燥してくれる機能があれば、メンテナンスが格段に楽になります。
また、自動洗浄機能が搭載されたタイプもあり、洗浄作業にかかる時間を短縮できるので、自分の要望に合った商品を選ぶようにしましょう。
サイズ
急速凍結庫とブラストチラーを選ぶ際には、ブラストチラーのサイズを慎重に検討することが重要です。
まずは、自施設の厨房内に適切に設置できるスペースが確保されているかを事前に確認しましょう。
また、単に設置場所があるかどうかだけでなく、作業動線がスムーズに保たれるかも併せて確認するようにしましょう。
使い勝手
急速凍結庫とブラストチラーを選ぶ際には、その機械の使い勝手で選ぶことも重要です。
実際に、冷凍作業が煩雑であると、現場の作業効率が大幅に低下してしまいます。
一週間に数回しか稼働しない冷凍機と、頻繁に稼働できる冷凍機では、最終的な生産量に大きな差が生じるのは明らかです。
現場で効率的に作業を進めるためには、現場のスタッフが機械を使いやすいと感じることが不可欠です。
そのため、導入する際には現場目線での視点を重視し、使い勝手を考慮して現場のニーズに合った機械を選定することが重要と言えます。
アフターケア
急速凍結庫やブラストチラーは長期間にわたり使用する設備であり、購入コストも決して安いものではないので、アフターケアの充実度で選ぶことも重要です。
万が一、故障した際に適切なサポートが受けられないと、機械が使えない期間が発生して売り上げに悪影響を及ぼしたり、修理費用が予想以上に膨らんでしまう可能性があります。
具体的には、単に製品の性能だけでなく、故障時の対応や活用方法のアドバイスなど、アフターサポートが充実している企業を選ぶことが重要です。
急速冷凍庫・ブラストチラーを使用する際の注意点

急速凍結庫とブラストチラーを使用する際の注意点については、以下の2つが挙げられます。
- 設置スペースが必要
- コストがかかる
それぞれの注意点について解説していきます。
設置スペースが必要
急速凍結庫やブラストチラーを導入する際には、冷却対象となる食品の量が増えるほど、それに応じた設置スペースを確保する必要があります。
実際に、急速冷凍庫やブラストチラーを導入したことによって、厨房内の作業スペースが狭くなってしまう可能性があるので注意が必要です。
しかし、最近では省スペース設計や小型サイズの急速冷凍庫やブラストチラーが販売されているので、厨房の広さに合わせて適切な機種を選ぶことが重要です。
コストがかかる
急速凍結庫・ブラストチラーを使用する際には、コストがかかってしまいます。
導入時には比較的安価なモデルは数十万円程度から手に入りますが、大型モデルになると数百万を超える場合も少なくありません。
また、電気代やメンテナンス代などのランニングコストもかかってしまいます。
そのため、急速凍結庫・ブラストチラーを使用する際には、費用対効果を出すことができるのか確認しておくことが重要です。
目的に応じて急速凍結庫かブラストチラーを選ぼう!

今回は、急速凍結庫とブラストチラーの違いについて紹介しました。
ショックフリーザーは食材を急速に冷凍することを目的とした機器です。
一方、ブラストチラーは、強力な風を利用して食材の熱を素早く取り除くために設計された機器で、両者の機能や設計の意図には明確な違いがあります。
また、急速冷凍機能を搭載したブラストチラーも市場にありますが、温かい食材をそのまま冷凍すると機器に大きな負荷がかかったり、霜の除去が必要になったりするので、使用には注意が必要です。
今回の記事を参考にして、目的に応じて急速凍結庫かブラストチラーを選ぶようにしましょう。
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