業務用冷蔵庫の温度設定には、冷蔵や冷凍といった用途ごとに目安となる温度があり、食品衛生上の基準も定められています。温度設定が適切でないと、食材の鮮度が落ちたり、食中毒菌が増えやすくなったりすることもあるため注意が必要です。
本記事では、業務用冷蔵庫の温度設定の目安について解説します。他にも「食品別に適した保存温度」や「設定した温度を正しく保つためのポイント」についても紹介していきます。ぜひこの記事を参考にして、業務用冷蔵庫の温度設定を見直し、適切な温度管理につなげてみてください。
業務用冷蔵庫の温度設定の目安

業務用冷蔵庫の温度設定には一般的な目安がありますが、保存する食材や用途によって適した温度は変わります。ここではまず、冷蔵室の基本的な適正温度と、温度設定がなぜ重要なのかを確認しておきましょう。
一般的な適正温度(冷蔵室の目安)
業務用冷蔵庫の冷蔵室の温度は、一般的におおむね2℃から6℃程度が目安とされています。食品衛生の観点では、要冷蔵の食品は10℃以下で保存することが一つの基準とされており、これを上回らないように管理することが大切です。ただし、扱う食材や開閉の頻度、設置環境によって適した設定は変わるため、目安をもとに自店の使い方に合わせて調整することが重要です。なお、業務用と家庭用では構造や冷却力が異なるため、温度管理の考え方にも違いがあります。詳しくは関連記事「業務用冷蔵庫と家庭用冷蔵庫の違いとは?」もあわせてご覧ください。
なぜ温度設定が重要なのか
温度設定が重要なのは、食材の鮮度と安全性に直接関わるからです。食中毒の原因となる菌の多くは、一定の温度帯で増殖しやすくなるため、調理後すぐに提供しない食品は10℃以下または65℃以上で管理することが望ましいとされています。設定温度が高すぎると菌が増えやすくなり、反対に低すぎても食材が凍って品質が落ちたり、電気代が余計にかかったりすることがあるため、ただ冷やすのではなく、食材に適した温度に正しく設定することが重要と言えます。
用途別の温度帯と設定の目安

業務用冷蔵庫は、保存する食材や保存期間に応じて、適した温度帯が分かれています。代表的な温度帯と目安は、以下のとおりです。
| 温度帯 | 目安温度 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 冷蔵 | おおむね2〜6℃ | 一般的な食材・飲料の保存 |
| チルド | 約0℃ | 肉・魚などを凍らせず低温で保存 |
| パーシャル | 約-3℃ | 微凍結でやや長めに保存 |
| 冷凍 | -18℃以下 | 食材を凍結して長期保存 |
以下、それぞれの温度帯について解説します。
冷蔵(チルド・パーシャルを含む)
冷蔵の温度帯は、食材を凍らせずに低温で保つための範囲です。一般的な冷蔵がおおむね2℃〜6℃であるのに対し、チルドは約0℃、パーシャルは約-3℃が目安とされ、これらは日本産業規格(JIS)でも温度の考え方が示されています。チルドは肉や魚などを凍らせる手前の温度で鮮度を保ちたいときに、パーシャルは微凍結でやや長めに保存したいときに向いています。保冷庫との違いや使い分けについては、関連記事「保冷庫と冷蔵庫の違いとは?」も参考になります。
冷凍
冷凍の温度帯は、食材を凍らせて長期間保存するための範囲です。家庭用と同様に、冷凍はマイナス18℃以下が一つの目安とされており、食品衛生上の基準では冷凍食品はマイナス15℃以下で保存することが求められています。温度が高いと食材の表面が乾燥したり、霜が付きやすくなったりして品質が落ちるため、しっかり下がる設定にしておくことが重要です。特に冷凍庫は外気温の影響を受けやすく、夏場は庫内温度が上がりやすいため、季節に応じた確認が欠かせません。
食材別に適した温度
同じ冷蔵でも、食材によって適した保存温度は異なります。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、原材料や製品の保存温度の目安が食材ごとに示されており、たとえば食肉類は10℃以下、生鮮魚介類は5℃以下、冷凍食品はマイナス15℃以下とされています。このように、傷みやすい魚介類はより低い温度が求められるなど、食材ごとに基準が分かれているため、複数の食材をまとめて保存する場合は、最も低い温度を必要とする食材に合わせるか、用途ごとに庫内を使い分けることが大切です。一律の設定にせず、扱う食材に合わせて温度を考えることが、安全な保存につながります。
業務用冷蔵庫の温度設定の方法

業務用冷蔵庫の温度設定の方法は、機種によって操作が異なります。誤った操作で意図しない温度になることを防ぐため、設定前には取扱説明書を確認しておくことが基本です。
デジタル式・ダイヤル式の設定方法
業務用冷蔵庫には、温度を数値で設定できるデジタル式と、つまみで強弱を調整するダイヤル式があります。デジタル式は庫内温度を数値で確認しながら設定できるため、目標の温度に合わせやすいのが特徴です。一方、ダイヤル式は「強・中・弱」などの段階で調整するタイプが多く、実際の庫内温度を温度計で確認しながら合わせると安心です。いずれの場合も、設定を変えた直後は温度が安定するまで時間がかかるため、しばらく置いてから庫内温度を確かめることが重要です。
設定時に意識したいこと
温度を設定する際は、外気温や食材の量、扉の開閉頻度といった使用環境もあわせて考えることが大切です。たとえば、気温が高くなる夏場や、出し入れが多い時間帯は庫内温度が上がりやすいため、やや低めに設定して様子を見ると安定しやすくなります。反対に、設定を下げすぎると電気代の増加や食材の凍結につながることもあるため、温度計で実際の庫内温度を確認しながら微調整することをおすすめします。
設定した温度を正しく保つためのポイント

業務用冷蔵庫は、設定温度を適切にしていても、使い方によっては庫内の温度が安定しないことがあります。設定した温度を正しく保つためのポイントについては、以下の3つが挙げられます。
- 庫内の温度ムラを防ぐ
- 開閉・霜・外気温の影響を抑える
- 温度を定期的に測定・記録する
庫内の温度ムラを防ぐ
庫内に食材を詰め込みすぎると、冷気の通り道がふさがれ、場所によって温度に差が出やすくなります。庫内の収納量は7割程度を目安にし、冷気が全体に行き渡るよう余裕をもって配置することが大切です。また、冷気の吹き出し口付近と扉付近では温度差が生じやすいため、傷みやすい食材は温度が安定しやすい場所に置くなどの工夫も有効です。
開閉・霜・外気温の影響を抑える
扉を頻繁に開閉したり、長時間開けたままにしたりすると、冷気が逃げて外の暖かい空気が入り込み、庫内温度が上がってしまいます。開閉は手短にし、必要なものをまとめて取り出すようにすると、温度の変動を抑えられます。また、霜取り運転の間は庫内温度が一時的に上がることがあり、外気温が高い時期も温度が上がりやすいため、こうしたタイミングも踏まえて温度を確認しておくと安心です。
温度を定期的に測定・記録する
設定温度と実際の庫内温度がずれていないかを確かめるには、温度計による定期的な測定が役立ちます。温度計は庫内の中央や扉付近など、温度を把握したい位置に設置し、毎日決まったタイミングで確認すると変化に気づきやすくなります。測定した温度を記録しておくと、異常の早期発見や、後述する衛生管理の記録にもつながります。
HACCPに対応した温度記録

業務用冷蔵庫の温度管理は、衛生管理の記録という観点でも重要になっています。食品衛生法の改正により、令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。ここでは、温度記録のポイントを確認しておきましょう。
記録すべき項目
温度記録では、いつ、誰が、何を、何度で測定したかを明確にしておくことが基本です。あわせて、設定した基準の温度を上回るなどの異常があった場合は、どのような是正措置をとったかも記録しておくことが求められます。こうした記録は、衛生管理の根拠になるだけでなく、機器の不調を早期に把握する手がかりにもなります。
記録を効率化する方法
毎日の温度記録を手作業で続けるのは負担が大きいため、温度を自動で計測・記録するデータロガーなどの活用も選択肢になります。自動記録を取り入れると、記録漏れを防ぎやすく、温度の変化を継続的に把握できるようになります。店舗の規模や運用に合わせて、無理なく続けられる記録方法を選ぶことが大切です。
適正温度に保てないと感じたら

詰め込みや開閉、霜取りといった使い方を見直しても庫内温度が下がらない場合は、機器の不具合が原因になっている可能性があります。設定温度まで下がらない、冷えにムラが大きいといった症状が続くときは、無理に使い続けず、原因を確認することが大切です。冷えない場合の具体的な原因については、関連記事「業務用冷蔵庫が冷えない原因とは?」もあわせて参考にし、改善しない場合は専門業者へ点検を相談すると安心です。
業務用冷蔵庫は用途に合った温度設定と日々の管理が大切
今回は、業務用冷蔵庫の温度設定の目安について紹介しました。冷蔵はおおむね2〜6℃、冷凍はマイナス18℃以下が目安で、食品衛生上は冷蔵10℃以下、冷凍マイナス15℃以下といった基準があり、食材ごとに適した温度も異なります。さらに、設定した温度を保つには、温度ムラや開閉への配慮、HACCPに沿った温度の測定・記録が欠かせません。温度設定は一度決めて終わりではなく、食材や季節、使い方に合わせて見直すことが大切です。今回の記事を参考にして、用途に合った温度設定と日々の温度管理を心がけてみてください。