飲食店の厨房設備は、加熱や冷却、洗浄など、用途ごとにさまざまな種類の機器をそろえる必要があります。必要な設備が抜けていたり、保健所の基準を満たしていなかったりすると、開業の遅れや追加工事につながることもあります。
本記事では、飲食店の厨房設備を一覧で紹介します。他にも「保健所の施設基準で求められる設備」や「導入前に確認したいインフラ」についても解説していきます。ぜひこの記事を参考にして、必要な厨房設備の全体像を把握してみてください。
飲食店の厨房設備とは
飲食店の厨房設備とは、調理や保存、洗浄など、店舗の営業に必要な業務用の機器類の総称です。家庭用の機器と異なり、長時間の連続使用や大量調理に耐えられる性能や耐久性が求められます。数多くの機器がありますが、用途によって大きく分類して考えると、必要なものを整理しやすくなります。まずは、どのような種類があるのかを一覧で確認していきましょう。
飲食店の厨房設備一覧(カテゴリ別)

飲食店の厨房設備は、用途によって大きく以下の6つに分けられます。
- 加熱・調理機器
- 冷却・冷凍機器
- 調理・下ごしらえ機器
- 洗浄・衛生機器
- 収納・搬送機器
- 排気・空調機器
まずは、カテゴリごとの主な機器を一覧で確認しておきましょう。
| カテゴリ | 主な機器 |
|---|---|
| 加熱・調理機器 | ・ガスレンジ ・フライヤー ・オーブン ・スチームコンベクション ・グリドル ・炊飯器 ・電子レンジ |
| 冷却・冷凍機器 | ・業務用冷蔵庫/冷凍庫 ・コールドテーブル ・製氷機 ・冷蔵ショーケース ・ブラストチラー |
| 調理・下ごしらえ機器 | ・作業台 ・シンク ・スライサー ・ミキサー ・フードプロセッサー ・洗米機 |
| 洗浄・衛生機器 | ・食器洗浄機 ・シンク ・消毒保管庫 ・手洗い器 |
| 収納・搬送機器 | ・食器棚 ・戸棚 ・ラック ・コンテナ ・台車 |
| 排気・空調機器 | ・レンジフード ・グリスフィルター ・換気/空調設備 |
それぞれのカテゴリについて解説していきます。
加熱・調理機器
加熱・調理機器は、料理を加熱・調理するための中心的な設備です。ガスレンジやフライヤー、オーブン、蒸す・焼く・煮るを1台でこなすスチームコンベクション、鉄板料理のグリドル、炊飯器、電子レンジなどが含まれます。提供するメニューによって必要な機器が変わるため、想定するメニューに合わせて選ぶことが大切です。火力や消費エネルギーが大きい機器が多く、後述する電源やガスの容量にも関わります。
冷却・冷凍機器
冷却・冷凍機器は、食材の鮮度や安全を保つための設備です。業務用冷蔵庫・冷凍庫、天板が作業台を兼ねるコールドテーブル、製氷機、商品を見せて売る冷蔵ショーケース、加熱後の食品を急速冷却するブラストチラーなどがあります。業務用は家庭用と構造や冷却力が異なるため、選定の考え方については関連記事「業務用冷蔵庫と家庭用冷蔵庫の違いとは?」もあわせてご覧ください。急速冷却や冷蔵陳列を行う場合は、関連記事「ブラストチラーの仕組みとは?」や「スーパーの冷蔵ショーケースの仕組みとは?」も参考になります。
調理・下ごしらえ機器
調理・下ごしらえ機器は、仕込みや盛り付けなどの作業に使う設備です。作業台やシンクのほか、食材をスライスするスライサー、混ぜる・刻むためのミキサーやフードプロセッサー、洗米機などがあります。作業台の高さや広さ、シンクの数は、作業効率や衛生管理に直結するため、動線を意識して選ぶことが大切です。
洗浄・衛生機器
洗浄・衛生機器は、食器や器具を清潔に保つための設備です。食器洗浄機やシンク、器具を消毒・保管する消毒保管庫、手洗い器などが含まれます。これらは衛生管理に直結し、後述する保健所の施設基準にも関わる重要な設備です。営業の規模や食器の量に合わせて、洗浄能力を選ぶとよいでしょう。
収納・搬送機器
収納・搬送機器は、食器や食材を保管・運搬するための設備です。食器棚や戸棚、ラック、コンテナ、台車などがあります。限られた厨房スペースを有効に使うため、収納量と設置場所のバランスを考えて選ぶことが大切です。なお、食器棚や保管庫は、衛生上の理由から戸(扉)が付いたものが求められる場合があります。
排気・空調機器
排気・空調機器は、厨房の熱や煙、においを排出し、快適な環境を保つための設備です。加熱機器の上に設けるレンジフードや、油分を捕集するグリスフィルター、換気・空調設備などが含まれます。排気が不十分だと、熱がこもったり油煙が室内に広がったりするため、加熱機器の能力に見合った排気を確保することが重要です。
保健所の施設基準で求められる設備

飲食店を開業するには、食品衛生法に基づく保健所の営業許可が必要で、厨房設備は許可の施設基準を満たしていなければなりません。基準の細かい数値は自治体によって異なるため、物件の契約前や内装設計の段階で、所管の保健所へ事前相談しておくことが大切です。ここでは、基準に関わる代表的な設備を確認しておきましょう。
シンク(2槽以上または食洗機)・手洗い設備
シンクは、一般的に2槽以上を設けるか、食器洗浄機を備えることが求められます。1槽あたりの大きさにも目安があり、自治体によって基準が異なります。また、調理する人が手を洗うための手洗い設備は、厨房とトイレの両方に設けることが必要です。2021年6月に施行された改正食品衛生法によりHACCPに沿った衛生管理が制度化されており、手洗い設備の整備も重視されています。
戸付きの食器棚・保管庫、床・壁の耐水
食器棚や器具の保管庫、食品・原材料の保管場所には、ほこりや汚れの侵入を防ぐため、戸(扉)が付いていることが求められます。また、厨房の床や壁は、清掃しやすく水に強い耐水性の材料であることが基準とされることが一般的です。内装を決める前にこれらの基準を確認しておかないと、後からやり直しが発生し、開業が遅れる原因になります。
グリストラップ(油脂の分離)
グリストラップは、厨房の排水に含まれる油分や固形物を分離し、そのまま下水へ流さないようにするための設備です。多くの自治体で設置が求められており、基準に該当する場合は設置義務が生じます。油分をそのまま流すと排水管の詰まりや環境への負荷につながるため、設置の要否を含めて、事前に自治体や設備業者へ確認しておくと安心です。
導入前に確認したいインフラ

必要な機器を選んでも、店舗のインフラが対応していなければ設置できません。厨房設備をそろえる前に、電源やガス、給排水、排気といったインフラの条件を確認しておくことが大切です。
電源(単相・三相)とガス種
厨房は家庭に比べて電力の使用量が多く、機器によっては三相200V(動力)の電源が必要になります。導入する機器ごとに電圧や必要な容量、コンセントの形状が異なるため、物件の電気容量が足りるかを事前に確認しておく必要があります。ガス機器を使う場合は、都市ガスかLPG(プロパンガス)かによって適合する機器が異なるため、物件のガス種の確認も欠かせません。
給排水・排気・防水床
シンクや食器洗浄機、製氷機などは給排水の設備が必要で、排水は勾配やグリストラップへの経路も踏まえて計画します。加熱機器やレンジフードは、規定の風量を排出できる排気ダクトに接続する必要があり、排気と給気のバランスも重要です。あわせて、厨房の床は水を扱うため、防水性と清掃のしやすさを確保しておくことが求められます。
厨房設備をそろえるときの考え方

厨房設備を一度にすべて新品でそろえると、費用が大きくなりがちです。予算と必要性のバランスを取りながら、無理なくそろえる考え方を押さえておきましょう。
新品・中古・リースを使い分ける
厨房設備は、新品のほかに中古やリースという選択肢もあります。新品は保証や省エネ性で有利、中古は初期費用を抑えやすく、リースは初期投資を分散できるという特徴があります。前の店舗の設備が残る居抜き物件を活用すれば、使える設備をそのまま引き継いでコストを抑えられる場合もあります。ただし中古や居抜きの設備は、状態や残りの寿命、保証の有無を確認したうえで判断することが大切です。
優先順位づけと省エネ・レイアウト
まずは営業に欠かせない必須の設備を優先し、あると便利な設備は後から追加するなど、優先順位をつけて計画するとよいでしょう。長く使う機器は、省エネ性能の高いものを選ぶと、電気代やガス代といったランニングコストを抑えやすくなります。また、機器の配置は作業の動線に大きく影響するため、レイアウトとあわせて検討することが、使いやすい厨房づくりにつながります。
厨房設備は一覧で把握し、基準とインフラを確認してそろえよう
今回は、飲食店の厨房設備を一覧で紹介しました。厨房設備は、加熱・冷却・下ごしらえ・洗浄・収納・排気の6つのカテゴリに分けて考えると、必要なものを整理しやすくなります。あわせて、シンクや手洗い設備、グリストラップといった保健所の施設基準に関わる設備や、電源・ガス・給排水・排気といったインフラの条件も、導入前に確認しておくことが大切です。新品・中古・リースを使い分け、優先順位をつけてそろえることで、コストを抑えながら必要な設備を整えられます。今回の記事を参考にして、必要な厨房設備を計画的にそろえてみてください。