エアコンの膨張弁が故障すると、冷えない、圧力が安定しない、霜が付くといった症状が現れることがあります。放置すると、コンプレッサー(圧縮機)の故障にまで波及するおそれもあるため、早めの対処が大切です。本記事では、エアコンの膨張弁が故障したときの主な症状について解説します。他にも「故障する主な原因」や「他の不具合との見分け方」についても紹介していきます。ぜひこの記事を参考にして、膨張弁の故障が疑われるときの判断に役立ててみてください。
膨張弁とは
膨張弁は、エアコンの冷凍サイクルの中で、冷媒の流れを調整する重要な部品です。エアコンは、冷媒が「圧縮→凝縮→膨張→蒸発」を繰り返して熱を運びますが、膨張弁はこのうち、凝縮器を通った高圧の液冷媒を絞って圧力を下げ、蒸発器へ送り込む量を調整する役割を担います。送り込む冷媒の量が適切でないと、冷房・暖房の能力が安定しません。膨張弁は、蒸発器を出た冷媒の「過熱度」(冷媒がどれだけ余分に温められたか)が適切になるように冷媒量を制御しています。冷凍サイクルの全体像については、関連記事「パッケージエアコンの基本的な仕組み」もあわせてご覧ください。
膨張弁が故障したときの主な症状

膨張弁が正しく働かなくなると、冷媒の流れが乱れ、さまざまな不調として現れます。膨張弁が故障したときの主な症状については、以下の4つが挙げられます。
- 冷えない・効きが悪い(能力低下)
- 圧力が安定しない
- 霜付き・凍結が起こる
- 異音や液戻りの兆候が出る
それぞれの症状について解説していきます。
冷えない・効きが悪い(能力低下)
膨張弁の故障で最も多い症状が、冷暖房の能力低下です。設定温度まで下がらない、吹き出し口と吸い込み口の温度差が小さい、運転時間が長引くといった形で現れます。膨張弁が閉じ気味のまま固着すると、蒸発器へ送られる冷媒が不足し、熱の交換が十分にできなくなるためです。複数の室内機がある業務用エアコンでは、系統によって効きにばらつきが出ることもあります。
圧力が安定しない
膨張弁は冷媒の圧力を調整する部品のため、故障すると冷媒回路の圧力が不安定になります。たとえば、冷媒を少し補充しても低圧側の圧力が上がってこない、コンプレッサーは動いているのに低圧があまり下がらない、といった状態が起こります。圧力の測定は専門的な作業になりますが、こうした圧力の異常は、膨張弁の不良を疑う手がかりの一つです。
霜付き・凍結が起こる
冷媒の流れが偏ると、蒸発器や配管の一部に霜が付いたり、凍結したりすることがあります。膨張弁の詰まりや開度の異常によって、冷媒が特定の場所に偏って流れることが原因です。一部だけに霜が集中している場合は、冷媒の流れが正常でない可能性があります。
異音や液戻りの兆候が出る
膨張弁を冷媒が通る際の流れが乱れると、「シュー」といった異音が出ることがあります。また、膨張弁が開きすぎると、蒸発しきらない液体の冷媒がコンプレッサーへ戻る「液戻り(液バック)」が起こりやすくなります。液戻りは、後述するようにコンプレッサーの故障につながる危険な状態です。
膨張弁が故障する主な原因と種類別の傾向

膨張弁の不調は、弁が「閉じ気味に固着して冷媒が不足する」場合と、「開きすぎて冷媒が過剰に流れる」場合に大きく分かれます。原因を理解しておくと、症状の見立てがしやすくなります。
詰まりや経年劣化による固着
冷媒回路に混入したゴミや水分が膨張弁に詰まると、冷媒の流れが妨げられます。特に水分は、膨張弁の絞り部分で凍って流れを止める「氷詰まり」を起こすことがあります。また、長年の使用による経年劣化で、弁の動きが鈍くなったり固着したりすることもあります。これらは冷媒の供給不足を招き、能力低下の原因になります。
種類別の故障傾向
膨張弁にはいくつかの種類があり、種類によって故障しやすい箇所が異なります。温度で冷媒量を調整する温度自動膨張弁は、温度を感知する感温筒の不良(冷媒抜けや取り付け・断熱の不良)で制御がずれることがあります。センサーと基板で制御する電子膨張弁は、センサーや制御基板、弁を動かす駆動コイル、配線の不良によって開閉がうまくいかなくなります。細い管で流量を制限するキャピラリチューブなどでは、詰まりが中心的な原因です。どの種類が使われているかによって、点検で疑う箇所が変わります。
| 膨張弁の種類 | 主な故障箇所・傾向 |
|---|---|
| 温度自動膨張弁 | 感温筒の冷媒抜け・取り付け/断熱の不良、均圧のトラブルで制御がずれる |
| 電子膨張弁 | センサー・制御基板・駆動コイル・配線の不良で開閉が乱れる |
| キャピラリチューブなど | ゴミ・水分による詰まりが中心 |
過熱度と液戻りによるコンプレッサーへの影響

膨張弁の故障を放置してはいけない理由は、コンプレッサーの二次故障につながるおそれがあるためです。膨張弁は、蒸発器を出た冷媒の「過熱度」が適切になるよう冷媒量を調整しています。過熱度とは、冷媒が蒸発しきってから、さらにどれだけ温められたかを示す度合いです。膨張弁が開きすぎて冷媒を送りすぎると、蒸発しきらない液体の冷媒がコンプレッサーへ戻り、液戻りによってコンプレッサーが損傷することがあります。反対に、閉じ気味で冷媒が不足すると、能力が低下するだけでなく、コンプレッサーに負担がかかることもあります。コンプレッサーの交換は高額になりやすいため、膨張弁の不調は早めに対処することが重要です。
他の不具合との見分け方と点検
膨張弁の故障で注意したいのは、同じような症状が、膨張弁以外の原因でも起こる点です。「冷えない」「圧力がおかしい」という症状だけで膨張弁の故障と決めつけないことが大切です。
紛らわしい他の原因
冷えない・圧力が安定しないといった症状は、冷媒漏れによる冷媒不足、フィルターやファンの汚れによる風量不足、温度を検知するサーミスタなどのセンサー異常、制御基板の不良でも起こります。たとえばセンサーの異常については、関連記事「エアコンのサーミスタとは?」もあわせて参考になります。冷えない場合の幅広い原因については、関連記事「業務用冷蔵庫が冷えない原因とは?」の考え方も参考になります。
圧力・温度による総合的な判断
膨張弁の故障かどうかは、冷媒回路の高圧・低圧、各部の温度、過熱度などを測定し、総合的に判断する必要があります。これらの測定や判断には専門的な知識と道具が必要で、正確な切り分けは有資格の専門業者による点検が欠かせません。膨張弁を疑うことは大切ですが、思い込みで部品を交換しても改善しないことがあるため、まずは原因の切り分けを行うことが重要です。
膨張弁が故障したときの対処
膨張弁の交換や修理は、冷媒の回収や真空引き、充填といった専門的な作業を伴うため、自分で行うことはできません。膨張弁の故障が疑われるときは、無理に運転を続けず、専門の業者に点検・修理を依頼することが基本です。早めに点検を受けることで、原因を正しく切り分けられるだけでなく、液戻りによるコンプレッサーの二次故障を防ぐことにもつながります。特に業務用エアコンは営業に直結するため、不調を感じたら早めに相談すると安心です。
膨張弁の故障は症状を見極めて早めに専門業者へ相談しよう

今回は、エアコンの膨張弁が故障したときの主な症状について紹介しました。膨張弁が故障すると、冷えない・圧力が安定しない・霜が付く・異音や液戻りといった症状が現れ、原因は詰まりや経年劣化、膨張弁の種類ごとの不良などさまざまです。これらの症状は冷媒不足やセンサー異常などでも起こるため、決めつけずに切り分けることが大切です。放置するとコンプレッサーの故障につながるおそれもあるため、膨張弁の故障が疑われるときは早めに専門業者へ点検を依頼しましょう。今回の記事を参考にして、症状を見極めて適切に対処してみてください。